以前よりオリジナルスプーンの加工方法を紹介しようと思っていたのだが
私の職業が金属加工の町工場であり機械だったり工具だったりが揃っていて
また型となる金属片もゴロゴロしているので、これらを紹介しても皆さんが簡単に
作れる訳でもなく参考にならないと、今までそのすべては紹介していなかった。
しかしこの間、座間で
いちえいさんに会った時、「スプーンのあのカーブはどうやって
作るんですか?」と聞かれたのだが、うまく説明できなかったのだ。
そんな事があって、参考になるかならないかは別として作り方を紹介してみる事にした。
ただしょっぱなから普通の家庭では有り得ない様相が登場するがガッカリしないで
ほしい。後で型を鉄ではなく木で作っても製作可能だという事を紹介する。
①凸型の材料は普通鉄と呼ばれているが材質的には機械構造用圧延鋼材(SS材)、
製品名的には「磨き平鋼」とか「引き抜き材」「フラットバー」と呼ばれるもので
この材料の12X25の物を長さ50ミリくらいにカットする。
(この材料は熱処理をしても焼きは入らない、本物のプレス型はダイス鋼か超硬で
作られているはずだ)
②スプーンを真横から見たカーブをマジックで下書きする(今回参考にしたのはノア)
③下書きのラインに沿ってサンダーでざっくりと削る。
紹介しておいてなんなんだがサンダーは慣れないと危険を伴う事を付け加えたい。
④センターにマジックでラインを書く
⑤センターラインが山の稜線になるようマジックを残しながら左右均等(大体)に削る。
⑥ヤスリで滑らかにして最後は#150の布ペーパーで仕上げて凸型完成
ここまで作業時間は大体30分!
⑦材料はホームセンターなどで売っている真鍮やアルミの板、これを強力タイプの
金切りバサミで凸型より一回り大きい短冊に切る。(このタイプの金切りバサミなら
真鍮の1㎜は普通に切れる)今回は真鍮0.8㎜を使用。
⑧コレが私が編み出した(?)ワザなのだが、普通スプーンのような形を成形するには
凸型に合った凹型の間に板を挟んでプレスするが、さすがに凹型を手作りする事は
出来ないので、凹型の代わりに10㎜くらいの厚さのゴムを使って万力に挟み
ムニュ~っと加圧して成形しているのだ。(普通このサイズの万力も無いけどネ)
ここで最初に話した凸型を木でやっても出来るかどうか試してみた。木材はそこいらに
転がっていた何か梱包用の端材でやったのだがあまり柔らかな物は向かないであろう。
耐久性は低いだろうが0.8㎜厚の真鍮版なら十分成形出来る事を確認した。
木材で出来るならサンダーを使わなくてもヤスリだけでも凸型の製作が可能になる。
・・・・・
スプーンのシルエットは今まで自分なりにイメージした形で作っていたが、
今回は分かりやすくする為ノアを真似て作ってみる。
⑨成形の終わった短冊にノアをあてがいまず前後の穴の位置をマジックで写し
⑩ポンチを打ってボール盤で穴を開ける穴の径は1.8㎜
(外形を決めるより先に穴を明けておくのがミソ、先に外形を仕上げてしまうと
なかなかいい位置に穴が明けられないからだ)
ボール盤なんてーのも普通は無いだろうが、電気ドリルでも廻されないように
注意すれば可能である。
⑪その明けた穴とマスターとなるノアを楊枝を差して固定し外形をマジックで描く
⑫金切りバサミで大まかに切り抜き
⑫後はこの線に沿ってヤスリで削って仕上げる
(実はこの仕上げ削りが一番時間が掛かる)
⑬ブランク完成(右側はマスター)
・・・・・
私も最初はスプーンのカップのカーブをへこんだ木の上に板を置いてハンマーでたたいて
作ったがこれではノーズ部の成形が難しいのと数を作る時に同じ物が出来ないので
悩んだ挙句このゴム作戦を思い付いたのである。
金型もだんだんと増えてきちゃったのだが、見た目は市販のスプーンと同じようでも
やはり性能は市販品には敵う事は出来ず、現在オリジナルスプーンによるミッションは
一時中断し、市販品で修行のやり直しをしているところである。オシマイ